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院長日記
医療情報
2018.05.31
正しい医療情報の見極め方 その1

前回のブログの続きです。

前回、紹介した本には、「経済的合理性」という言葉が繰り返し出てきます。

経済には、「売れるから作る」という需要と供給のバランスが必ずあります。医療の分野でも、それは生じていて、「経済的合理性」が重視されれば、患者さんの需要があるからというだけで、投薬や検査を行うことがありえます。しかし、その人には必要のない、リスクのある投薬や検査をすることになれば、患者さん第一の医療にはなりません。

医療健康分野のウェブサイトや本は過度に不安を煽って閲覧されたり売れることだけを考えていることは少なくありません。ウェブサイトも1クリックいくらというお金が発生しているのです。それは、サイトに広告を貼っている企業から支払われます。これをクリックすることで、誤った治療選択を行うこともありえます。

このようなリスクを最小限とするには、正しい医療情報を得る必要があります。前回のブログに書いたように、正しい医療情報を得るには、情報のリテラシー(情報活用能力)を身につけることが大切です。そのために、5W2H(「何を」「誰が」「どこで」「いつ」「いくら、どのくらい」「なぜ」「どのように」)を意識しましょう。

今回は、「何を」について書きます。情報の内容を検討する方法です。

まずは、言葉の使い方で信用できるかを考えることができます。「すぐに」「らくに」「だけで」など、簡単に健康になれると謳うものは信じないことです。新しい治療が優れているとは限らないので、「最新」「先端」もそのまま受け取らないようにしましょう。

治療成績(どのくらい効くか)の解析方法には、信頼性の順列があることを認識しましょう。一番信頼性が高いのは、メタアナリシスシステマティックレビューといって、複数の研究のデータを、統計学の手法を用いて解析したものです。つぎにランダム化比較試験(RCT)という、客観的に治療効果を判定する方法が信頼できます。ほかにも、評価非ランダム化比較試験(RCTよりも研究者の主観が入りやすい)、症例報告(数例だけで研究)、動物を使った実験などがあり、当然最後の方は信頼性が低くなります。「アトピー性皮膚炎の発症のメカニズムが解明」などといった記事が出た時に、動物実験で実証などと書かれていたら、これから検証に膨大な時間がかかるため、今のところ一般にはほとんど価値がないと考えて良いことになります。

疾患の治療には、それぞれ専門の学会の治療ガイドラインがあります。ある疾患に対しての治療法を「非常に勧められる」「勧められる」「やってもよい」「勧められない」などに分類しています。ガイドラインに書かれている、各治療の信頼性の判定にはどんな研究方法で有効と判断されたかが重視されます。皮膚科でも、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、尋常性乾癬、にきび、円形脱毛症、男性及び女性型脱毛症その他様々な治療ガイドラインがあります。こういう治療ガイドラインは一般の方でもインターネットで閲覧できますので、参考にされるとよいかと思います。

テレビなどでも健康番組が花盛りですが、こちらも注意が必要です。例えば、「〇〇の人は〇〇の習慣がある」というような情報がよく流れます。これは、因果関係なのか、相関関係なのかを見極める必要がありますが、テレビなどではそこまで言ってくれません。たとえば、「メタボ検診を受けている人はそうでない人と比べて長生きする」というデータがありますが、メタボ検診を受けているから長生きするという「因果関係」があるわけではなく、もともと健康に対する意識が高い人がメタボ検診を受けているから長生きしているという「相関関係」があるというほうが正しいようです。なので、「メタボ検診を受けたら長生きするというわけではない」という結論になります。

まとめると、正しい情報かどうかを判断するには、情報の「質」を見抜く必要があるのですが、上記のような方法は知っておくと便利です。判断できないときは複数の専門家に意見を仰ぎましょう。長くなったので続きは次回とします。

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