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ステロイド外用剤

アトピー性皮膚炎の炎症を抑えるのに多くの方がステロイド外用剤を使用しているかと思います.しかし,ステロイド外用剤を拒否される患者さんも少なくありません(最近は一時より減りましたが).確かに,ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎の炎症を抑える治療法であり,治癒させる治療法ではありません.外用して一時的によくなってもまた悪くなるのです.そのため,どうしていいかわからないと思われている方もいらっしゃるでしょう.
 一般的に外用剤で用いられる「ステロイド」は副腎皮質ホルモン剤です.つまり,体内にあるホルモンとほとんど同じです.ステロイド外用剤の種類は百を超えますが,それぞれ強さが違います.皮膚科では大まかに5つのランクに分けていて,強い順に「strongest」「very strong」「strong」「mild」「weak」と呼んでいます.部位と炎症の程度によって適応されるランクが変わるのです.当然,強さと量によって効果も副作用も変わります. 

ステロイド外用剤の副作用

 ステロイドを外用していて副作用を心配されない方はほとんどいません.私も副作用が出ないように処方する際には強さと量を慎重に考えます.外用剤の副作用としては,皮膚の菲薄化により毛細血管が目立ってくる,多毛になる,にきびが出来るなどがあります.いずれも長期連用によって引き起こされる局所の副作用です.しかし,よく言われるのですが,皮膚が黒くなる,網膜剥離を起こすという副作用はありませんし,白内障になる,顔が丸くなる,ホルモンバランスを崩すというのは,内服薬の副作用であり,外用剤の副作用ではありません.皮膚が黒くなるのは炎症後の色素沈着であり,にきび跡ややけど跡が黒くなるのと同じです(基剤のワセリンによる日焼けはあるかもしれません).白内障はアトピー性皮膚炎の方に多いのですが,炎症症状が眼周囲に及ぶことや機械的に叩いたり掻いたりすることで起こるものです(ステロイド外用剤がこの世に登場する前からアトピー性皮膚炎の方に白内障が多いことは知られていたようです).

どのくらい外用すれば副作用が出るの?

 アトピー性皮膚炎の患者さんは皮膚科に行くとたいていはステロイド外用剤が出されます.それは正しい使い方をすればこの薬が炎症を抑えるには非常に有効であるからです.ところが,患者さんはこの薬を処方されてもどの程度まで使っていいのか説明を受けた方は少ないかと思います.実はここにこの薬の問題点はあるのです.
 私が大学病院のアトピー性皮膚炎専門外来に在籍していた時,専門外来の医師たちで長期にわたってステロイド外用剤を用いた場合の副作用の頻度を調査したことがあります.その結果,長期に用いても顔面で1ヶ月10g以下,体では30g以下の使用量では薬の強弱に拘わらず局所的な副作用がほとんど生じていないことがわかりました.ですから,この量はある程度参考になるかと思います.詳しいデータはいずれ当院のホームページで紹介したいと考えています.
 睡眠薬や風邪薬は決められた以上の量を内服すると命に関わります.ですから内服量を指定されるのです.それと同じでステロイド外用剤も皮膚科専門医が指定する強さと使用量を守っていただければまず問題ありません.もし副作用を生じても可逆的です.極端な場合,弱いランクの薬を短期間外用するのも拒否される方がいらっしゃいますが,これは,アルコール中毒になるからお酒を飲むのはいやだと言っているのと同じようなものなのです.

10年以上ステロイド外用剤を使ってきて感じること

 私は大学病院のアトピー性皮膚炎専門外来で10年以上アトピー性皮膚炎の治療に取り組んできました.その大部分の方はステロイド外用剤で治療していましたが,一部の方は意志を尊重して脱ステロイド療法を行ってきました.そこで感じたのは,ステロイドを徹底的に使用してもアトピー性皮膚炎はいずれ治りますし,使わなくてもいずれ治るということです.ただし,平均するとステロイドを使っていた方のほうが圧倒的にquality of life (生活の質)は上です.感覚的な話になりますが,中途半端に使っていた方(処方されると使うが薬がなくなって悪化してもしばらく来院しない方)が一番コントロールが悪いと感じています.もし,自分がアトピー性皮膚炎だったら,ステロイドは使います.実際,自分の息子(アトピーっ子です)には使っています.脱ステロイドはその目的が理解できる年齢の方にしかお勧めしません.かゆみに苦しんでいるのは見るに耐えられないですし,子供の成長にいろんな意味でマイナスになると思っています.

それでも使いたくないとき

 ステロイド外用剤のいい点,悪い点についてはこのホームページでさらに充実させていきたいと思いますが,ステロイド外用剤についてほとんど知らない方がなんとなく使いたくないと拒まれるのはどうかと思いますので,まずステロイドがどんなものであるのかを正しく知ってもらいたいと思います.ただし,それを知ったうえで使用を拒まれるのは決して悪いことではありません.治療については主治医とじっくりと話し合ってみることが大事です.お互いアトピー性皮膚炎を克服したいという点で目標は同じですので,遠慮しないでいい治療を探っていくことをお勧めします.